[多汗症]小学三年生 リコーダーもまた試練だった 〜止められない手と、教科書の壁〜

新たな試練

小学三年生になると、「音楽」の授業でリコーダーが始まります。

白くて細長い、あの懐かしい縦笛です。

みんな一度は演奏したことがあると思います。

両手でリコーダーを持ち、指を器用に動かして音を変えていく。

授業では、先生の指示に合わせて息を吹き、指を動かし、音を重ねていきます。

でも…

その「当たり前の動き」が、私にはとても難しかったのです。

手汗とリコーダーの相性は最悪だった

私は昔から、手のひらに大量の汗をかくタイプでした。

リコーダーを持っていると、両手は常に前に出したまま。

しかも、指を穴にぴったり乗せていないと音が変わってしまうので、

手を離して拭く、なんてことはできません。

じわじわとにじみ出る汗。

それがリコーダーに沿って流れて、指先からポタッと机に落ちる。

焦ると、また汗が出てくる。

するとまた焦って……という、手汗スパイラルに、私は毎回陥っていました。

机の上には、水滴がいくつも落ちていて、拭いてもすぐに次の汗がやってくる。

ハンカチで拭こうとしても、タイミングが難しい。

そもそも、片手だけでリコーダーを持つのも怖いし、

拭けたとしても中途半端で、すぐにビチャビチャに戻ってしまう。

教科書が、私を守ってくれた

何とかこの状況を変えられないか——。

私は、ある作戦を思いつきました。

「音楽の教科書を、立てる」という方法です。

机の上に教科書を立てておけば、周りから手元や机の上が見えにくくなる。

そうすれば、落ちた汗や、湿った手でバタバタしている姿も、少し隠すことができます。

自分でも驚きましたが、この作戦は思った以上に効果がありました。

それに、担任の先生も、教科書を立てていた私に何も言いませんでした。

おそらく気づいていたと思います。

でも、言わない優しさ」が、そこにありました。

ただ静かに、そっと見守ってくれる

それだけで、私は少しだけ自信を持てるようになったのです。

滑る指、ふさがる穴、響かない音

とはいえ、リコーダーはなかなか手強い相手でした。

手汗で指が滑り、きちんと穴をふさげません。

すると「ピーピー」という変な音が鳴ります。

逆に、指を離しているのに、汗で穴がふさがったままになってしまうこともありました。

何度も間違えて、何度も変な音が出て……。

でも、何度も練習を重ねるうちに、ほんのわずかですがコツがつかめてきました。

「このタイミングなら、一瞬だけ手を下ろして拭けるかも」

少しずつ、汗の流れを読む力がついてきたのかもしれません。

そして、リコーダーを吹きながら、自分の手と向き合う時間が増えていきました。

全部吹けた、その達成感

周りの子たちは、スラスラと演奏していました。

でも私は、「音を間違えないようにすること」で精一杯。

それでも。

全部の音を、最後まで吹き終えることができたとき、

私は静かにガッツポーズをしました。

それは、「みんなと同じようにできた」という喜びでした。

手汗というハンデがあっても、努力すればちゃんとたどり着けるんだ

そのとき初めて、自分自身にそう思うことができたのです。

優しさに支えられた時間

このリコーダーの授業を乗り越えられたのは、

私の努力だけではありませんでした。

あのとき、教科書を立てていた私に何も言わなかった先生の優しさ。

その沈黙が、どれだけありがたかったか、今でもはっきり覚えています。

次回予告

次回は、小学三年生で体験したもうひとつの「試練」、

習字の授業についてお話ししようと思います。

「濡れた半紙」と「止まらない汗」に向き合った、忘れられない授業です。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。

手汗に悩む方に、少しでも希望が届けば嬉しいです。

今日も——

あせってないけど、汗かいてます。

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