またこの季節がやってきた
春が来るたびに思っていた。
「今日は汗、少なめでありますように」
登校中の朝はひんやりしていても、日中は気温がぐんぐん上がる。
春の始まり、私はそんな淡い期待を抱いて歩いていました。
「今日はきっと、あまり汗をかかずに済むはず」
でも、春の気候はそんなに甘くはありませんでした。
小学一年生に続いて、苦い思いの季節がスタート。
ノートに鉛筆を走らせるたびに、手汗で紙がしっとりして、文字がにじむ。
たまに、先生の雑談が入ると、私はそっと手を膝の上に。
ハンカチを握りしめて、つかの間の休息です。
きっと先生から見たら、机の奥で手元が隠れ、話をよく聞いているように見えたでしょう。
鍵盤ハーモニカとの出会い
二年生になってから始まった音楽の授業。
その中でも、鍵盤ハーモニカは手ごわい相手でした。
演奏中は、常に両手を机の上に出していなければいけません。
つまり、汗を拭く時間がない。
私は右利きだったので、右手が汗で濡れてしまったら、左手で鍵盤を押さえ、
そのすきに右手をハンカチで拭く。
左手には常にハンカチを握らせておいて、汗を抑えながら、
すぐ演奏に戻れるように準備していました。
でも、ずっと思っていたんです。
「この汗、誰かに気づかれていないだろうか」
その不安がまた緊張を生み、汗はどんどん出てくる。
止めたくても止められない。
そんな自分に、嫌気がさすこともありました。
習い事の始まり
私はもともと、ぽっちゃり体型でした。
外で遊ぶよりも家でビデオを見るのが好き。
そんな私を見て、母は「運動させたほうがいい」と思ったのでしょう。
とはいえ、私は走るのが苦手で、野球もサッカーも好きじゃなかった。
でもある日、幼稚園の友達が水泳を始めたと聞いた母が、
なんと私の知らぬ間にスイミングスクールへの申込みを済ませていました。
……正直、びっくり。
だけど、水の中では汗を気にしなくていい。
水泳は、私にとってはじめて「汗を忘れられる場所」になりました。
水の中では自由
スイミングスクールには、他の学校の生徒もたくさん通っていました。
だから私が手足に汗をかくことなんて、誰も知らない。
安心して話しかけられたし、友達も自然にできていきました。
学校では、なかなか自分から話しかけられなかった私が、
水の中では、笑っている。
水泳の時間だけは、自分らしくいられる。
そんな場所があることが、どれだけ私を救ってくれたか。
気づけばスイミングが、私の“心の避難所”になっていました。
泳ぐことが、こんなに楽しいなんて。
少しだけ、強くなれた気がした
学校では相変わらず、目立たないように、静かに過ごす毎日。
それでも、水泳を始めてから、私はほんの少しだけ、前向きになれていた気がします。
実家はあまり裕福ではありませんでした。
それでも母は、私に合った習い事を見つけて、通わせてくれた。
あのときの母の判断が、今思えば本当にありがたい。
私が“自分を受け入れるきっかけ”をくれたのは、母のおかげでした。
次回、小学三年生編へ
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。
多汗症に悩んでいる方に、少しでも参考になれば嬉しいです。
今日も
「あせってないけど、汗かいてます」。
同じような悩みを持つ誰かに、少しでも届けば嬉しいです。
コメント