幼少期の悩み 〜止まらない汗と、小さな気づかれたくなさ〜
私は手や足が、びっくりするほど汗をかく子どもでした。
幼稚園のころから、粘土遊びをすれば粘土はビショビショ、折り紙はふにゃふにゃ。
お友達のようにサラッと扱えなくて、「あれ?」と見られないよう、そーっと手を隠して遊んでいました。
足も同じでした。
素足で歩くと、床に汗の跡がポタポタ落ちて、時にはツルッと滑りそうになるほど。
靴の中も蒸れて、まるで雨に濡れたみたいにぐっしょり。
両親に話してみても、「そのうち治るよ」と軽く流されるだけで、私は密かに不安を抱えていました。
「成長すればましになる」、その言葉を信じて、なんとかやり過ごしていたのです。
小学一年生の試練 〜つなぎたくない手と、つながれた優しさ〜
小学校に上がっても、手足の汗は一向におさまりませんでした。
遠足で高学年のお兄さんと手をつないで歩くとき、私は手汗で手がびしょびしょ。
お兄さんは不思議そうな顔をしながらも、嫌がらずに手をつないでくれて、それがどこか嬉しくて、でも申し訳なくて。
どうしても気になって、「靴ひもがほどけた」とウソをついて、お兄さんの手をそっと離し、列から離れてしゃがみこみました。
結んだふりをして、みんなが少し進んだあと、私は列のうしろから静かに戻りました。
お兄さんは弟くんとの会話に夢中で、私のことには気づいていませんでした。
静かで目立たない性格だった私は、こうやって自分の汗をごまかしていたんです。
授業中の小さな恐怖 〜カードとおはじきと、汗の密告者〜
小学一年生のある授業。
おはじきやカードを使って数字を学ぶ時間でした。
手汗でカードはぺたっとくっつき、おはじきも手に張りつく。
でも一人でやっている分には問題なかったのです。
ところが先生が「隣の子と組んでやってみましょう」と言った瞬間、心の中で叫びました。
「やめて〜っ!」
焦りで汗はますます増えるし、バレたくない気持ちで頭が真っ白。
けれどそのとき、隣の子が体調不良で席を外してくれて…。
私は奇跡的に、ひとりで作業することに。
正直、ホッとしました。
体育館という戦場 〜裸足の恐怖と、雑巾の勇気〜
私の小学校には、上履きを履く文化がなく、校舎内は一年中裸足。
私にとっては最大の試練でした。
足の裏から出る汗は床にしっかりと跡を残します。
誰かが滑ったら…と思うと、常につま先立ちで歩くようにしていました。
なるべく廊下の端っこをそーっと歩きます。
自分の席の下には、掃除用の雑巾を干していたので、こっそりそれを足元に敷いて汗を拭いたり、床をさりげなく拭いたり。
授業が終わって、みんなが外で遊んでいる間に、私は静かに掃除をしていました。
休み時間も教室に残ることが多かった私。
人と違う自分がバレないよう、工夫しながら毎日を過ごしていました。
夏休み目前の事件 〜真っ黒になったハンカチと、知られなかった涙〜
夏休み前の終業式。
教室で軽く話を聞いて終わりだと思っていたら、なんと全校生徒で体育館集合。
しかも裸足で。
体育館の床で、体操座りをしながら校長先生の話を聞いている間、汗は止まりません。
手に持っていたハンカチで、さりげなく足や床をぬぐい続けました。
家に帰ってから、そのハンカチを見てびっくり。真っ黒になっていたのです。
「お母さん、ごめんね」
そう思いながら、胸がぎゅっとなったのを覚えています。
終業式が終わり、私たち一年生から体育館を退出。
後ろの子が私の足元の汗に気づかないか不安でしたが、彼女は友達とのおしゃべりに夢中で、気づくことはありませんでした。
こうして、汗と気づかれたくなさでいっぱいの一学期が終わりました。
小さな私の、小さな戦い
夏が過ぎて、秋が近づくと汗の量は少し減りました。
それでも、ハンカチと雑巾はいつもそばに。
汗をかくのが恥ずかしくて、でもどうにもできなくて。
そんな日々を、私はひとり静かに乗り越えてきました。
おわりに
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます。
これは、「多汗症」という名前も知らなかった頃の、私の小さな戦いの記録です。
同じように汗で悩んでいる人に、少しでも届いてくれたらうれしいです。
今日も「あせってないけど、汗かいてます」。
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